浅野いにお「ソラニン」
(2005年 - 2006年、ヤングサンデー、小学館)全2巻
中村一義の曲と同じタイトルが気になり手に取った初連載
「素晴らしい世界」を読んで、正直苦手な作家だと思った。
下北系の若者が好きそうな話だなぁと、30歳にもなろう自分
には全く共感出来なかったから。
うだつのあがらないバンドマンやフリーターたちの、だらだら
した日常、それが「素晴らしい世界」ってか?と鼻白んだ。
それ以来この作家の漫画を手に取ることはなかったけれど、
22歳の新入社員君が貸してくれたので「ソラニン」を読んでみた。
あいかわらず出てくる登場人物はモラトリアム人間ばかり。
大学を卒業してなんとなく同棲して、会社で働くことに情熱を
持たず、時々スタジオに集まってはバンド練習。気の置けない
友達たちとダラダラ遊ぶ毎日。
「あいかわらずこんな漫画描いてんのね~」
そう思ったら一転。
(ネタバレになるのでストーリーは割愛)
……頑張ったじゃないか、いにお。
(年下だから呼び捨て)
決してこの「ソラニン」が歴史に残る傑作だと言いたいわけじゃない。
好きかと訊かれれば、「まぁまぁ普通」と答えるだろう。
ただ一つ言えるのは、しばらく読まなかった間に浅野いにおという
漫画家が、どれだけ漫画に真摯に向き合ったか、その努力が充分
伝わってきたということ。
「素晴らしい世界」のような漫画のニーズはあると思うし、同じような
雰囲気の漫画を描き続けても食っていけるだろう。
しかし「素晴らしい世界」と同じようなモラトリアムな若者を題材に
しながら、その世界を切り崩してみせた。
毎日たいした事起きないけれど彼女がいるからなんとなく幸せ、
という自ら描いた『素晴らしい世界』を、自らがブチ壊してみせた。
「俺は、幸せだ。」
「ホントに?」
「本当さ。」
「ホントに?」
(主人公の独白)
こんな風に漫画を描けるようになったんだ、と2歳年下の漫画家の成長
を見て、「若者を甘く見ちゃいかんなぁ」と少々恐縮させられてしまった。
熱心な読者にはならないけれど、またしばらくしたら
「いにお、頑張ってるかな?」と手に取ってみようと思う。